1982年 丸井 ステラミア

BGM♪　おしゃれな部屋がいろんな角度から色々に映される。部屋の主と思われる女性が朝食の用意をしている。顔は見えない。サラダを食べていたり、ゆで卵をつくったり、缶きりで缶を開けたり、レモンを絞るところから類推。
食卓が上から映る、朝食は一人分。部屋の中で女性が側転をしている。
ナレーション：「部屋に入ったとたん、君を感じた、生活はアートだ。丸井オリジナルインテリア　ステラミア」
食卓が横から映る。

キャプションを読んでもちっともかっこよさの伝わらないCMですね。いわゆる80年代によくあったいろんなシーンのコラージュ型のCMです。これは部屋のかっこよさがとにかく素晴らしくて紹介CMとして選んでみました。

80年代の丸井、といえばもうそれだけで想像がつくほどの一種の色があったといっても過言ではありません。もちろん丸井のCM自体が関東地区でのローカルだったために、日本の多くの人は見られなかったわけですが、ああ、今確実にかっこいい時代に生きているんだな、という実感を持たせてくれるCMの数々でありました。
もちろんそもそも僕が家具のCMが好きだ、というのはさておいたとしてもこのCMはかっこいいし、それは丸井全体の色だったのです。

いわゆるデパートがその空間をプロデュースすることなしにはもはや生き残っていけなかった、というのは西武百貨店の一連の広告でよくわかるし、その分析は吉見俊哉や、北田暁大の著書でよくわかります。とくに北田は「80年代の広告はその広告制作そのものの方針を記号論においているので、記号論的分析とよく合致する」というようなことを言っていました。なるほど。このCM,記号論者の格好の餌食になりそうなCMですよね。でもそれは当たり前、広告を作る人がそもそも広告論をよすがに作っているからなんだ、ということです。これは今まで気づきそうで気づかなかったことかもしれないです。よく西武のCMばかりが研究の対象になっているけど、丸井も一考の価値があると思いますよ。どうですか、学者さん？

とにかく学者がなんと言おうと、この時代の丸井のCMは素晴らしかったし、こうしたかっこいいCMの色になって行ったのは80年代からだと言う気がするんですよね。丸井が「月賦の丸井」と銘打っていたころの《ニューファミリーの提示》もまたそれはそれで興味深いものがありますが、80年代の丸井のCMのかっこよさは特記すべきものがあると思います。
一つ言えば、学者があれこれ言うよりも前にライフスタイルの提示をCMで行うデパートのCMの数々はもっと研究されてもいいんじゃないかなという気がします。
最近はスパークリングセールと季節キャンペーン以外はCMを打たないようで残念です。

コメント 3

丸井のＣＭは特別でしたねー。宣伝というよりご神託に近いものがあった。「これがトレンドじゃ」「かくあれ」といったメッセージは脅迫的で、しかも抗いがたいほどにかっこよかった。田舎者の私は丸井のＣＭが流れるたびに、圧迫感を受けていたものでした。
「そのうえ、Yes Do It」なんていうキャッシングの宣伝文句も懐かしいなあ。
それはそうと、ＣＭに写りこむ個室の変遷も面白いですね。あるときから、急にフローリングのワンルームがどわっと出てきたり。テレビの床置きっていつごろからＣＭに現れだすんだろ？
by porepore (2005-12-31 17:51) 

この「カッコイイ人たち、モノ達を提示する」ってのはファッション業界とかデパートの物売りの伝統的な手立てだと思うんですが、とくに西武系のデパート(パルコ)とか丸井はこの手立てを一種のイデオロギーとして行使したところに面白みがありますよね。
個人的には伊勢丹もこの傾向に加担してる気がしますが、TVCMを流さなかったのが残念なところです。ていうか、丸井もこの時期は関東ローカルな百貨店だったわけですよね、なんで伊勢丹ってTVCMやらなかったんだろう？
もっとも全くやらなかったわけではなく、季節ごとの何かの告知程度はやってたようですが、ここまで大々的にはやらなかったみたいですね。

丸井のCMは80年代の空気が詰まっているので僕も大好きです。持っている分全部ここで紹介していきたいくらいです。
by grand-age (2006-01-19 05:22) 

全部！いいですね。期待してます。パルコも印象的なＣＭやってましたよね。一般の人の２歩くらい先を行っている、あるいは行っているかのように思わせる内容でした。
伊勢丹のＣＭっていうと、遊歩人（ゆうほじん）というコピーのやつを覚えています。８０年代前半だと思います。モード系のキメキメＣＭでしたね。そういえば伊勢丹のポスターはいつもキメキメかも。手間隙かけてますよね。
by porepore (2006-01-21 22:40)